食生活の変化は、どのようにして始まったの?
なつきさん:ダイエットの延長線上から
拒食が始まったのは中学2年生の頃でした。最初はちょっとした食事制限がきっかけで、体重が減っていくことが純粋に嬉しくて、そこからどんどんのめりこんでいきました。体育の持久走で「動けば痩せる」と実感したことも重なって、食べないことへの気持ちが強くなっていったんだと思います。
その後、大学に入って部活や飲み会を通じて「人と食べることって楽しい」と感じるようになり、自分の中にあった制限のルールが少しずつ薄れていきました。最初は食事が楽しかったのが、だんだん過食へと移行していきました。社会人になって一人暮らしを始めたことで、「いつでも食べて吐ける」という環境が整ってしまい、それが過食嘔吐を加速させた要因だったと、今は思っています。
らんさん:体調不良での体重変化がきっかけに
きっかけは大きく3つあったと思っています。水泳部に所属していて体のラインが見えやすい環境だったこと、昔から自分の体型にあまり自信が持てなかったこと、そしてある日体調不良で少し食べる量が減ったとき、体重が減ったことへの喜びを初めて強く感じたこと。それから徐々に、食べる量を減らすことに積極的になっていきました。
高校生で勉強を頑張りたいと思っていた時期でもあり、「食べる時間を減らせばその分勉強できる」という考えも重なって、夜ごはんを抜いたり一口しか食べなかったりが半年〜1年ほど続きました。そのうち、自分を律することがだんだんと義務感に変わっていき、ある日その反動で食べることを止められなくなって、過食へと移っていきました。
keiさん:就活のプレッシャーと「太ったら就職できない」という思い込みから
就活がうまくいかない時期に、「肥満だと管理職になれない」という話を聞いたことが、食事制限のきっかけになりました。いま振り返ると、痩せたことと就職はほとんど関係なかったのですが、当時の自分の中ではそれが直結していて。体の栄養が足りなくなったのか、やがて食事制限を抑えられなくなり、食べる方向へ動き出しました。
もともとお酒が好きで、飲みすぎて吐くことがあったのですが、それがいつの間にか「食べて吐く」ことと結びついてしまい、過食嘔吐に移っていきました。頭の中が食べることでいっぱいになって、やめたいのにやめられないという感覚がずっと続いていました。
変化の中で、どんな気持ちだった?
なつきさん:痩せることへの安心感と、過食になった時の苦しさ
拒食の時期は、痩せることができているという感覚が心の支えになっていました。ただ、制限によって人と一緒に食べる機会が失われていく寂しさもあって、体型の変化だけじゃない苦しさもあったと、今は思います。
過食に移った時が一番つらかったです。体型が変わっていくことを自分で受け入れられなかった。でも食べることも止まらない。その板挟みがとても苦しかったです。
らんさん:コントロールできなくなることへの苦しさ
もともと、自分が決めたことをきちんとやりとげることに満足感を感じるタイプでした。だから、食べることをコントロールできなくなっていく感覚が、特につらかったと思います。体型の変化もさることながら、「ずっとできていたことができなくなってしまった」という感覚が、心に大きくのしかかっていました。
keiさん:精神的な疲弊と「やめたいのにやめられない」葛藤
頭の中が食べることでいっぱいになってしまって、気が狂いそうなくらい離れられない感覚がずっとありました。お金も時間も体への負担もかかるし、本当にやめたい。でもやめられない。その葛藤がとても辛かったです。当時は「病気」という認識も自分の中になくて、「自分が勝手にやっていること」と思っていたから、なおさらしんどかったと思います。
変化と、どうやって付き合っていったの?
keiさん:「吐かなくていい食べ方」を自分で考えた
過食嘔吐をやめたいと思いながらも、人と食事の場を共にしたいという気持ちが少しずつ強くなっていきました。そこで考えたのが、「吐かなくても大丈夫な食べ方はないか」という発想の転換でした。食物繊維の多いものを選んで、「これは食べても出ていくから吐かなくていい」と自分に言い聞かせながら、少しずつ嘔吐しないで食べることに慣れていきました。
変化のきっかけになったのは、カウンセリングで出会ったおそらく摂食障害の方の姿を見て「このまま10年経ったら自分もこうなるかもしれない」と感じたこと、そして「食べることができなければ、誰かとコミュニケーションを取る機会も失われていく」と気づいたことです。体重が増えることに納得できていたわけじゃないけれど、それよりも大切にしたいものがあった、そういう選択だったと思います。
らんさん:「食べてしまった自分」を少しずつ許す練習
食べることへの罪悪感をなくしていく、それが自分の回復の中心にあったと思います。「食べてしまっても、大丈夫」と自分に言い聞かせることは、言葉にするのは簡単だけど、実際にはとても難しかった。罪悪感を感じにくいものに置き換えてみたり、たくさん食べてしまったとしても「置き換えられたから少し進歩した」と自分を許す機会を少しずつ増やしていきました。
お母さんに毎食の様子を客観的に見てもらったことも、振り返るとよかったと思っています。もともと「0か100か」という極端な考え方をしやすい自分に気づいて、極端になること自体は悪くないけれど、それが自分を苦しめるなら少し緩めていこう、とフォーカスを変えていきました。
なつきさん:時間が、少しずつ気持ちを変えてくれた
「コントロールしたいけどできない」という状態を、抗うのをやめて、じわじわと受け入れていった感じがあります。明確なきっかけがあったというよりも、時間がそうさせてくれたというのが正直なところです。
周りの人に何を言われても納得できなかったので、自分が自分のペースで納得していくことが、一番大切だったと思っています。また、体型が変わっても周りの人の自分への接し方がそんなに変わらなかったことが、少しずつ「太ることで自分の価値が下がるわけじゃないかもしれない」という気持ちにつながっていきました。
食生活の変化に戸惑うあなたへ
今回のイベントでは、「衝動はいつまで続くのか」「体型の変化をどう受け入れたらいいか」という、リアルな問いが参加者から寄せられました。
なつきさんは「ずっと増え続けることは、私の場合はなかった」と話してくれました。keiさんは「受け入れたわけじゃないけれど、それ以上に大切にしたいものがあった」と。らんさんは「自分を責めることを緩めていくことに、エネルギーを使った」と話してくれました。
3人の経験はそれぞれ違っていて、「このパターンが正解」というものはありません。でも、一つ共通していたのは、変化の中でも、少しずつ自分なりの折り合いのつけ方を見つけていったということでした。
「一生、治らないかもしれない」と感じている方もいるかもしれません。でも、今日の3人の話が、「こういう経験をしてきた人がいる」「私だけじゃなかった」と、少しでも感じてもらえる手がかりになれば、それがこのイベントを開催した意味になると思っています。
