「そのままでいい」がきっかけに ── 食卓に支えられた料理研究家が摂食障害から回復するまで (前編)
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「そのままでいい」がきっかけに ── 食卓に支えられた料理研究家が摂食障害から回復するまで (前編)

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中学生の時に過食嘔吐を発症し、長くその症状と向き合われた髙窪美穂子さん。その後、家庭料理研究家・フードコンサルタントとして独立され、現在は料理本の出版や身体にやさしいレシピ開発、安心できる食卓に関する講演など、様々な方面で活動されています。食や食卓、そして自分自身と、どのように向き合ってこられたのか、お話をお聞きしました。
この記事に紹介されている人のプロフィール
髙窪 美穂子さん

「身体によくて、ちゃんとおいしい」をコンセプトに活動する家庭料理研究家・フードコンサルタント。「食卓は心の居場所」をテーマに、シンプルな調理で身体によくてちゃんとおいしい家庭料理の提案をはじめ、商品開発や講演などを通して、毎日の食卓づくりや食の大切さを伝えています。

中学生の時、ストレスから過食嘔吐へ

── はじめに、摂食障害の症状が始まったきっかけについて、教えていただけますか。

元々、家族のストレス全般が、私に集まりやすい家庭でした。いちばん年下で、元気いっぱいだから何をしても大丈夫そうに見えたからでしょうね。でも実際には、物心ついた頃には家族の顔色をいつも伺っていて、家でも気が休まることはあまりなかったように思います。

思春期の多感な時期だった中学生の頃、父から度を越した暴力が続いたり、母が色々と精神的に抱えきれなくなって、若い頃の辛い経験を泣きながら話されたことなどが重なりました。

見かけは大人に近くても、精神的にはまだまだ発展途上。経験値の少ない年齢だった私は、様々な出来事をどう受け止めて処理して良いかわからないストレスから逃れるように、気持ちが食べることへ向かっていきました。そして徐々に体重が増えて体型が変化したことを母に強い言葉で指摘されたことがきっかけで、過食嘔吐が始まりました。

ストレス発散のために食べたい、でも親にとって理想の娘になりたい、認められたい。今振り返ると、私にとって過食嘔吐をすることは、ありのままの自分を認められたいのに認めてもらえない自分の心の穴を埋めることと、親の理想の姿に近づくこと、両方を実現するための「選択」だったのだと思います。心の穴の埋め方は人によって違って、誰かに依存する人もいれば、物を買い集める人もいます。私の場合は、たまたまそれが食べることだったんです。

その根底にあったのは、「親に受け入れられなければ自分には価値がない」という思い込みでした。

家庭にいるしか生きる手段のない年齢でしたし、親にとって「いい子」でありたいと思う子ほど、言われたとおりの姿にならなければと自分を追い詰めてしまうと思うのですが、私もその一人だったのだと思います。

「食卓は居場所を象徴する場所」

── 当時、食事や料理とは、どう向き合われていたのでしょうか。

その後も、過食嘔吐とは長い間向き合い続けました。

摂食障害の症状を抱える方の中には、食に向き合うこと自体が辛いという方も多いかもしれません。でも私にとって料理は、唯一、母に手放しで褒められる貴重なスキルでした。後で母本人から聞いたのですが、昔気質の母は、女性にとって料理は切っても切り離せないから嫌いにならないよう意識的に褒めていたそうです。そんな背景もあり、とにかく本当に小さい頃から料理をすることが身近で、色々と工夫して料理することが大好きになっていきました。

大学時代には母から「お友達との約束がなくなったら、家に帰ってきなさい。食事はあるから外で食べることなんてしなくていいのよ」と言われていました。後年、あの頃のことを思い返してみると、その言葉があったから、私は何とかドロップアウトせずにすんだと思っています。性格的に歪んでしまっても不思議ではないような経験も、沢山しました。それでも持ち堪えられたのは、最後に戻っていい場所として「食卓」が残っていたからだと思います。

食卓を囲むことは、ただ食べる、お腹を満たすだけの行為ではないと私は思っています。自分のための食事が準備され、食べられる場があるということは、命をつなぐことを担保されている、居場所がある、ということ。そして、たとえ共通の話題がない相手でも、食卓を囲んで「同じ釜の飯を食べる」ことで自然に会話が生まれて、居場所ができていく。

食卓にまつわるさまざまな経験をしたことで、次第に私は「食卓は居場所を象徴する場所ではないか」と強く思うようになりました。

ビクビクしながらでは、ご飯を食べても食べた心地がしませんよね。だから人は、食卓につくとき、「ここにいていいんだ」「あなたは生きていていいんだよ」と、無意識のうちに感じて、安心できるかどうか確かめているのではないかと思うんです。安心して食べていいんだと思えることで、本能的に生きていてもいいんだよ、大丈夫だよと言う空気まで感じ取っているのではないか、と。

「自分のままで良い」と伝えてくれた人との出会いが転機に

── そこから、食やご自身との向き合い方は、どのように変わっていったのですか。

過食嘔吐が止まったのは、夫とお付き合いをはじめたのがきっかけでした。

お付き合いするようになって少し経った頃、勇気をふりしぼって、自分が摂食障害だと打ち明けたんです。すると夫は、摂食障害の本を片っぱしから読んで、その原因が親との関係なのではないかと教えてくれたのと同時に、「あなたはそのままでいいんだよ」と伝えてくれました。それだけで、自分でも笑ってしまうくらい、症状がぴたりと止まったんです。人間って、すごいですよね。

実は、大人になっても人間関係をうまく構築することが苦手だったり、色々な出来事が重なったりして、何度も過食嘔吐が短期間良くなっては再発する、をくり返していました。そんな中で「私が私のままでいい」と心の底から言ってくれる人と出会えて、今までどうやっても埋まらなかった心の穴が一気に埋まったことが、転機になったのだと思います。

あまりにピタッと過食嘔吐が止まったので、以前のように再発しないか、しばらくは用心深く自分を見ていましたが、再発せずに今に至り、気づけば過食嘔吐に悩んでいた期間よりも長い時間が経って、本当にもう大丈夫なんだと思えるようになりました。「ありのままの自分でもいいんだ」と大切な人に言ってもらえたことで、自分自身でもそう思えるようになって、過食嘔吐を手放すことにつながったのだと思います。

『白身魚と野菜のやさしい包み蒸し』のレシピ

今回は特別に、安心して食べやすい包み蒸しのレシピを教えていただきました。

油を使わず、塩分量も調節しやすい、素材の味を感じられる一品です。

《材料 (1人分)》

  • たら、鯛、さわら、メカジキなどの白身魚切り身‥‥‥1切
  • 玉ねぎ‥‥‥1/4個
  • にんじん‥‥‥1/4本
  • しめじ‥‥‥100g
  • レモン果汁‥‥‥大さじ1程度
  • 塩‥‥‥小さじ1/4 + お好みの量
  • オーブンシートペーパー‥‥‥30cm程度の長さ
  • 水‥‥‥200ml

《作り方》

1)白身魚の切り身に塩小さじ1/4をまぶします。玉ねぎとにんじんは洗って皮をむき、それぞれ薄切りにします。しめじは石突を切り落とし、バラバラにします。

2)オーブンシートペーパーの上に1)の白身魚切り身、玉ねぎとにんじん、しめじの順で乗せ、キャンディ包みにします。

3)フライパンか鍋に水200mlを入れて火にかけ沸騰したら、2)のキャンディ包みを入れて蓋をし、全体に火が通るまで10分程度、中弱火で加熱します。途中で水がなくなりそうになったら、適宜足してください。

4)3)の加熱が終わったら、お皿にキャンディ包みを盛り付けて開き、上からレモン果汁とお好みの量の塩をかけてお召し上がりください。

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