「そのままでいい」がきっかけに ── 食卓に支えられた料理研究家が摂食障害から回復するまで (後編)
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「そのままでいい」がきっかけに ── 食卓に支えられた料理研究家が摂食障害から回復するまで (後編)

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中学生の時に過食嘔吐を発症し、長くその症状と向き合われた髙窪美穂子さん。その後、家庭料理研究家・フードコンサルタントとして独立され、現在は料理本の出版や身体にやさしいレシピ開発、安心できる食卓に関する講演など、様々な方面で活動されています。食や食卓、そして自分自身と、どのように向き合ってこられたのか、お話をお聞きしました。
この記事に紹介されている人のプロフィール
髙窪 美穂子さん

「身体によくて、ちゃんとおいしい」をコンセプトに活動する家庭料理研究家・フードコンサルタント。「食卓は心の居場所」をテーマに、シンプルな調理で身体によくてちゃんとおいしい家庭料理の提案をはじめ、商品開発や講演などを通して、毎日の食卓づくりや食の大切さを伝えています。

インタビュー記事 前編はこちら

みんなが笑顔になれる、シンプルで美味しい料理

──  料理をお仕事にし、いまの活動に至るまでには、どんな変化があったのでしょうか。

もともと、小さいころから料理が大好きで、過食嘔吐で苦しんでいた若い頃から、本当は料理の仕事に進みたかったんです。ただ、アトピーの症状が重く、その道は一度あきらめました。

その後、いくつかの仕事を経て、ある会社で食品販売に携わり始めました。仕事そのものは楽しかったのですが、とても過酷な職場でした。まだまだ古い体質が残っている会社で、体調を崩しても診断書がなければ有給取得ができない。妊娠しても法定の産休以外は休暇制度もないので、やがて娘を授かったのですが、産休明けから朝早くから夜遅くまで娘を預けて、必死に働く日々でした。

余裕がないため食事作りも疎かになって、生まれて初めてお惣菜やデリバリー、外食に頼る割合が高い生活が数ヶ月続きました。そうこうしている間に疲労がピークに達したことやストレスが原因で、アトピーが全身に広がってしまったんです。その時に、対処療法で一時的に治しても、結局は同じことの繰り返しになる。だからなんとか食事を通して体の中から体調を改善したい。同時に、体に良いと言われる極端な食事内容にすることなく、家族も喜んでくれる料理を一緒に囲んで食べたい、と思いました。

家族みんながおいしいと言ってくれて、シンプル調理で自分の身体にも優しい食事をどう作れば良いのか、そのために1から食材のことや調味料のこと、食に関することを必死に調べて、独学を重ねて、今、私が提唱している「身体によくてちゃんとおいしい家庭料理」のベースが出来上がったんです。その後、近しい人たちに決して容易い道ではない、と言われたのですが、料理研究家として独立することを決めました。独立してからは、大きな壁に幾度となくぶつかりながらも、家族に支えられ全国の生産者さんを訪ね歩いて現場で学んだり、ご縁をいただいて本の出版、販促用レシピ開発のお仕事をいただくなど、少しずつ、仕事の幅を広げていきました。

そうして数年が経った頃、もう一つ大きな転機がありました。更年期をきっかけに、それまで軽々とできていたことが、思うようにできなくなってしまったんです。アトピーも再び悪化し、眠れない日が続くなど、数年間苦しみました。

その経験の最中、はっとしたんです。

その頃主宰していた天然だし教室の生徒さんから「きちんと出汁をとる時間がない」「こすのが面倒」「だしがらをどうしていいかわからない」と言われたことが何度もありました。ご質問にお答えしながら、その当時の私は「簡単なことなのに、そんな手間なのかな?」と思っていたんです。でも、自分の体調が悪くなって、それまで当たり前にできていたことができなくなって、ようやくわかりました。「あの時の生徒さんも、こんなふうにしんどかったのかもしれない」と。料理は時に、作る人にとっても負担になりうるものなんですよね。

この経験をきっかけに、食べる人だけでなく、作る人も負担を感じず楽しめることが大事だと、なお一層思うようになりました。料理を教えることに加え、商品開発や講演に、少しずつ活動を広げてきたのも、その思いからです。ひと振りで味が決まって、身体に優しい出汁を開発して自社商品として販売を手がけるようになったのも、作る人の負担を少しでも軽くしたいから。

作る人も食べる人も、みんなが笑顔になれること。シンプルな調理で、ちゃんとおいしいこと。私にとってこの2つはとても大切なこと。料理をしなければ、という思いが負担になって笑顔がなくなってしまっては、本末転倒ですから。

今の私にとって、食卓を囲むことは「一緒に食卓を囲むあなたを大切に思っている」ということを伝えるだけでなく、「自分のことを大切にしている」と自分自身に伝える方法でもあると思っています。料理ができない時は、お惣菜を使っても良いんです。ただ、お惣菜をトレーのまま出すのではなく、お皿に盛りつける一手間だけは、できればしてみてほしい。その一手間をかけることが、自分にも相手にも心をかけることに繋がっていると思っているからです。

同じ痛みを抱える人たちへ

── 最後に、いま摂食障害と向き合っている方や、その周りの方へ、伝えたいことはありますか。

まず伝えたいのは、「ありのままのあなたでいい」ということ。

摂食障害の方は、とても真面目な方が多いのかなと思います。完璧でなければ、理想どおりでなければ、ありのままの自分には価値がない ——そんなふうに思い込んでしまうことも多いかもしれません。だからこそ、まずはその思い込みを、少しずつ手放してみてほしいです。

例えば、家族と食卓を囲むときも、無理に同じものを食べる必要はありません。お水しか飲めない、お茶しか飲めないなら、まずはそこから始めても良い。「これだけ食べなければいけない」という考えは、当事者もご家族も、両方をがんじがらめにしてしまいます。そこから自由になることが、最初の一歩なのだと思います。そして、できたことを、一つ一つ認めて、褒めてあげてほしいんです。ご家族なら、水が飲めた、ひと口食べられた、席に座れた ——その小さな前進を、大いにほめる。当事者の方自身も、まずは自分を認めて、褒めてあげてください。自分を認めることが、次の一歩に繋がるはずです。

ご家族の中には、過去をふり返って、自分を責めてしまう方もいると思います。でも、ご自分の過去の言動を必要以上に後悔する必要はないんです。見てほしいのは、これから先のこと。遠い理想ではなく、最初の一歩を踏み出せたら、そこを一緒に喜んであげてほしいです。

食べられないときは、お茶を一口飲めただけでも、本当にすごいんです。守らなければいけないことなんて、本当はそう多くありません。自分を粗末にしないこと。そして、自分と相手の尊厳を両方大切にすること。これを忘れなければ、きっと大丈夫。私は、そう思っています。

『だし香る卵雑炊』のレシピ

今回は特別に、1人分から作れる卵雑炊のレシピを教えていただきました。鰹の旨みを生かした、塩分量が調整しやすいレシピになっています。心も身体も温まるような一皿です。

《材料 (1人分)》

  • 水‥‥‥300ml
  • 粉鰹:鰹節を細かくしたものでも良い‥‥‥小さじ1山盛りで
  • ごはん‥‥‥100g
  • しょうゆ‥‥‥小さじ2
  • 塩‥‥‥ひとつまみ程度
  • 卵‥‥‥1個

《作り方》

1)鍋に水、粉鰹、ごはんを入れて火にかけます。

2)1)が沸騰したらしょうゆ、塩を加えて味を整え、最後に溶き卵を回し入れ、火を通します。
しょうゆや塩の量はお好みで調整してくださいね

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