本記事は当事者の方にご登壇いただいた対談トークセッションイベント”“吐かない過食”は軽くない —わたしたちが向き合ったこと”の後編になります。
前編を読みたい方はこちらから→“吐かない過食”は軽くない —わたしたちが向き合ったこと①
つらさに対してどう折り合いを付けていった？
――症状に波がある中で、自己否定や自分の体型の変化に対する恐怖とどう付き合ってきましたか？
すん：私は拒食から始まりました。身長158cmで40kgを切るまで痩せたとき、50kgに近づくだけでも「この世の終わり」くらいの恐怖を感じていました。けれど過食がひどくなって60kgを超えた時は、半分諦めのような、もう自分は駄目なんだという感じでした。その後は少しずつ環境が変わり、ストレスが減る中で症状も落ち着いていきました。今でも波はありますが、「60kgいってないからいいかな」と思えたり、「どうせまた戻るから」と極端に痩せようとしないようになりました。今は、「太っても痩せてもいない今」を許容しよう、という感じで落ち着いてきています。
――その境地に至るまで、どれくらいかかりましたか？
すん：過食が一番ひどかったのが27〜28歳で、今は34歳。考え方が変わってきたのは1年前くらい。だから6年くらいですかね。
ほのか：私もすんさんのように、はっきり「治った」という感覚はなくて。以前は1回過食すると「自分なんてダメだ」と思ってたけど、「食べすぎることもあるよね」と自然に思えるようになって、それでだいぶ楽になりました。私は学校生活がすごくストレスだったので、社会人になってストレスの種類が変わったのも影響したかもしれません。
なつき：私は大学に入ってから過食になりました。大学1年の頃は拒食で痩せてたけど、その後太って、自分の中ではすごく恥ずかしかった。でも周囲の人たちは体型の変化があっても接し方が変わらなかったんです。自分の「太って恥ずかしい」という感覚と、他人の見方が一致しないってことに気づいたことが、大きかったなと思います。
社会人になってからは、精神的に苦しみを抱えてる人たちが、それでも他の場面で頑張ってる姿を見て、「自分の摂食障害も一部でしかない」と思えるようになりました。
――考え方が変わるまで、どれくらいかかりましたか？
なつき：中2で拒食になって、大学1〜2年で非嘔吐過食。大学4年以降に過食嘔吐も出てきて、卒業してから6〜7年。考え方が大きく変わったのは、摂食障害になってから8年目くらいです。
なつきさん
今苦しんでいる方へメッセージ
――何年かかるかは人それぞれですが、みなさん短期間で急に変わったわけではないということですね。では、今苦しんでいる方やご家族に向けて、メッセージをいただけますか？
すん：私も当時、治った人の言葉なんて受け入れられませんでした。でも今回話していて思ったのは、「誰にも話してなかった」と思っていたけど、上司や指導教官など、苦しいということ自体を理解してくれる人もいたなってことです。つらさを誰かに伝えるのは難しいけど、自分が今つらいんだということをまず自分で認めて、その上で気持ちを少しでも話せる相手を見つけると、少し楽になると思います。
ほのか：私も当事者のときは経験者の声すら受け入れられなかったし、SNSとかでも「痩せてる子がかわいい」という空気がある中で、「摂食障害になるのはおかしい」と思われがちだけど、そうじゃない。そんな情報ばかり浴びてたら、なっちゃうよなって。だから、自分を責めないでいてほしいなと思います。
なつき：苦しいときに人の言葉なんて入ってこないと思うし、「何も聞きたくない」ってなる気持ちもよくわかります。でも、「しんどい」と感じる気持ちは本物で、誰かに否定されたとしても、その感覚を否定しなくていい。逆に、しんどい中にも何か小さな楽しみやできたことがあるかもしれない。そんな部分にも、少し目を向けてみてほしいです。
編集後記
同じ摂食障害といっても、非嘔吐過食ならではのつらさがあるということが改めてよく分かった今回のイベント。そのつらさを抱えながらも、自分を責めずに、少しずつ小さな楽しみや良い変化を感じていく中で、長期的に自分自身との付き合い方、自分自身の受け容れ方が見えてくるかもしれない。今回の記事を読んでいただいた方に、そんな「絶望ばかりではない」ということに気付けるきっかけを与えることができたら嬉しいなと思います。
