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「自分のペースで、進んでいい」—摂食障害を抱えながら、それぞれの進路を選んだわたしたち

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「皆さんは、摂食障害と向き合いながら学校生活を続けることに悩んだ経験はありますか?」今回は、11月9日に「摂食障害×進路」をテーマに開催したイベントのまとめレポートをお届けします。摂食障害を経験しながら通信制高校・大学や院内学級、高卒認定試験の取得などを選択してきた3人が、それぞれの決断や道のりについてお話ししました。
この記事に紹介されている人のプロフィール
まいさん、もんちさん、なつきさん

まいさん:高校生~28歳ころまで拒食症とうつ病を経験。高校を中退後、高卒認定試験に合格。その後、通信制大学と専門学校を経て、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を取得。現在は寛解し、ソーシャルワーカーとして活躍中。

もんちさん:全日制の高校に入学後、高校1年生で拒食症を発症し休学。その後、非嘔吐過食の症状を経験するも徐々に回復。現在は通信制の高校に復学し、アルバイトと両立しながら卒業を目指している。

なつきさん:14歳から20代後半まで拒食症と過食症を経験。中学では院内学級を経験し、高校進学を経た後に大学を卒業。現在はフルタイムで就業中。

まずは、皆さんがそれぞれの進路を選択するまでの経緯について教えてください。

まい:「目標に辿り着くまでの道のりは一つじゃない」という気づき

摂食障害の症状が始まったのは高校生の頃でした。高校3年生のとき、症状が重くなって、ほぼ1年間入院することになったんです。その結果、出席日数が足りなくなってしまいました。

それまでの私は「高校を卒業して大学に行かないと人生が終わる」と、本気で思っていたんです。でも、そんな時に担任の先生や保健室の先生が、高卒認定試験のことを教えてくれました。そこで初めて「高校を出なくても、進学できたら結果オーライなんだな」と気づくことができたんです。その気づきが、高卒認定試験の受験を決めた大きな理由になりました。

高校時代には、入院中に病院のお医者さんが学校に出向いてくれて、校長先生を含む先生たちと話し合いの場を設けてくれました。「15分授業に出たら出席扱いにする」という特例まで学校が決めてくれて…。周囲の方々が協力してくれたことが、本当に大きかったですね。

もんち:自分ができなくなったことを認識するのが怖かった高校時代

私が拒食症を発症したのは、高校1年生の2学期に入る頃でした。急激なダイエットで体力がなくなり、病院に行くことになったんです。その時点で、学校に通うのは難しいと判断され、休学することになります。

当時の私は、病気になったことで、みんなが普通にやっていることをできない自分を認識するのが怖くて…。回復過程での体型変化も受け入れられなかったし、制服を着ることにも抵抗がありました。なので、保健室登校という選択肢も選べなかったんです。

両親は「学校に行くことがあなたの仕事」という考えを持っていたので、通信制高校への転入について背中を押してくれました。あまり揉めずに済んだのは良かったなと思います。ただ、通信制には心の病を抱えた人も多いと聞いていたので、「どんな風に人と向き合えばいいんだろう」という不安はありました。

なつき:少しでも勉強できる環境を求めて院内学級へ

私が拒食症になったのは中学2年生のときです。そのうち体調が悪化し、半年以上入院することになりました。院内学級へ移ることを決めたのは親だったんですが、私自身も「入院期間が空白になるよりは、少しでも勉強できる方がいい」と、前向きに捉えていたと思います。

退院した後、地元の中学校に戻りましたが、体調の関係で他の子たちと同じ時間数は学校に通えませんでした。そんな中でも、公立・私立ともに高校受験をし、私立高校に受かりました。

自分が通っていた高校は、元々行きたかった学校ではなかったんです。なので、高校は「次の大学に行くためのステップ」や「通過点」と捉えていました。

選択した進路先での生活はいかがでしたか?

まい:通信制大学で出会った人生の先輩たち

最初に入った地元の全日制大学は、私が本当に行きたい場所ではありませんでした。当時の体調や、通学にかかる時間などを考慮して選んだ場所だったんですが、「通過点」として捉えていたので、徐々に通うのが辛くなってしまって…。

でも、精神保健福祉士になる夢は諦めたくなかったんです。なので、通信制でも資格が取れると知ってから、大学の先生に相談して通信制大学の3年次に編入することを決めました。

通信制大学には、福祉の現場ですでに働いてきた人生の先輩方がたくさんいました。その先輩方と話せたことも、本当に良い経験になったと思います。勉強もどんどん楽しくなっていって。当初は精神保健福祉士の資格を取ることにこだわっていたんですが、より柔軟に、社会福祉士の資格を最初に取得して、その後、精神保健福祉士の資格取得をしていくというルートを選べたことも大きな変化でした。

もんち:学校だけでコミュニティを築く必要はない

通信制高校に通って3年目になります。友達は特に作ろうと思っていなくて、実際3年間で新しい友達はできていません。これは「学校だけでコミュニティを作る必要はない」と自分の考え方がシフトしたからなんです。

通信制高校は時間の使い方が自由で、自分の体調回復や生活を優先できるので、今はポジティブな印象を持っています。体調との兼ね合いも取りながら過ごしているので一度留年もしているんですが、それでも自分を責めずに過ごせているのは、この環境のおかげだなと感じています。

なつき:社会との繋がりを持ち続けながら今に

高校については通過点だと捉えていたので、私は積極的な友達作りはしませんでした。当時は摂食障害の症状、特に食事のマイルールや体型へのこだわりを守る方が重要だったんです。交友関係が広くなると食事に行く機会も出てくるので、マイルールを破らないといけないことも増えると思っていました。

高校時代は勉強に力を入れていたんですが、拒食が続いていて思うように成果が出ず、悩んでいました。大学時代にはうつ病を発症し、過食もひどくなって入院しました。単位を落とす可能性もあったんですが、先生の配慮で単位をもらうことができて…。「まずは同級生と一緒に卒業すること」を最大の目標にしたんです。なので、就職活動はタイミングを遅らせて行いました。

社会人になってからも不調はあったんですが、他の人の「普通」から外れるのが怖くて…。だから社会との繋がりを止めずに今まで続けてきました。

振り返って思うことや当時の自分に伝えたいことはありますか?

まい:世界は自分が思っているよりも広い

過去の自分に伝えたいのは、「世界はもっと広いんだよ」ということです。
目標に辿り着くまでの道筋はいくらでもあります。私は高校卒業からソーシャルワーカーとして働き始めるまでに10年近くかかったんですが、その経験は全て無駄になることはありませんでした。

もんち:人と違うことは強みになる

「自分をしたいようにしてもいい」ということと、「人と同じでないことはむしろ素晴らしいこと」だと伝えたいです。通信制高校を選んだからこそ、今日こうして話す機会を得られました。人と同じでないことは逆に強みになることもあるので、「大勢の中でのナンバーワン」ではなく、「オンリーワン」という考え方を大切にしてほしいなと思います。

なつき:今の自分が何をしたいのか、耳を傾ける

進路で悩むときは、「今、自分が何をしたいのか」「本当に望んでいることは何か」を大切にしてほしいです。私は以前、「こうすべき」という考えで進んできた部分がありました。その結果、本当の気持ちや体調をないがしろにしてしまうこともあったんです。もっと治療に専念しても良かったかもしれないなと、思うこともあります。摂食障害のことに関わらず、何を選ぶときも「今自分がどうしたいか」に耳を傾けるように心がけています。

編集後記

3人の話に共通していたのは、「自分のペースで進んでいい」というメッセージでした。

高卒認定試験、通信制高校、院内学級—どの道も、周りと同じではないかもしれません。でも、その選択があったからこそ、今の皆さんの考えやお仕事、生き方に繋がっているんだなと感じた1時間でした。進路に悩んでいる方にとって、今回のイベントレポートが少しでも参考になれば幸いです。