きっかけは不安定な家庭環境
きっかけは中学2年生の時。
「当時はあまり気がついていなかったですが、家も安心できる場所ではありませんでした。家庭環境の影響が大きかったのかなって思います」
「両親の仲が悪くて、母の精神状態もあまり安定していない状況でした。幼いときからなんとなく『お母さんを支えなきゃ』って思いながら過ごしてきました」
それは自然なことだと思っていたが、今になって思えば負担だったのだと思う。
「普段でも、母の考え方と違うと否定されることが多くて、当時は『自分が間違っているのかな』とか『悪かった』と思ってもやもやしたり、罪悪感をかかえていました。でも、今思うとそれは違っていたな、もっと早く気がついていたらなと思います。」
そんな中、部活動で競技力を上げるために始めた減量が、摂食障害のきっかけになった。
「顧問の先生が友達に『そんな体じゃ強くなれない、もっとしぼらないと』と言っていて『自分も体重を落としたら速くなるかも』と思いました。最初は純粋に競技力アップのためだったんですが、自分の身体は『私がコントロールできる』みたいな思いもあったんだと思います。体重が減っていく達成感もあって、減量にはまっていきました」
寒さや不眠がつらかった
「中学校3年生になったら、もうダッシュもできないくらい体力が落ちていて。でも、体重が増えるのが怖くて止められませんでした」
中学2年生の夏から10kg以上落ちてしまった。
「冬はすごく寒くて、制服に裏地をつけてもらったりしていました。夜も空腹と寒さで眠れなくて、睡眠導入剤を処方してもらっていました。食事も、最初は肉を魚や大豆製品に変えたり、油物を避けたりするだけだったのが、だんだんエスカレートしてしまって。」
この時期は1食のご飯を40グラムとかまで計るようにまでなった。
受験期をきっかけに食と向き合うように
転機になったのは受験期だった。
「ある日、数学の問題を解いてたら、急に頭が真っ白になって、数字は見えているし解き方も分かるのに頭がゆっくりしか動かなくて。低血糖だったと思うんですが、そのとき本当に怖くなりました」
「このままじゃ危ない。受験も大丈夫かなと、危機感を感じました」
なんとか高校受験は乗り切ることができ、大学は栄養学部に進むことにした。
「環境の変化が良かったみたいです」
「高校生のときみたいに朝から夕方まで詰め込みの授業じゃなくて、自分のペースで過ごせるようになったからかな、と思います」
大学に入ったあとは徐々に食事に対する考え方も変わってきた。
「友達と楽しく過ごすことを優先したい、という思えるようになりそのためには『これくらいなら食べても大丈夫かも』って思えるようになってきました。今思うと、精神的な余裕ができたことも、大きかったと思います」
かつては、ご飯の量を必ず計っていた。
「40グラムとか60グラムとか。でも大学に入ってから、少しずつ変わってきました。今日はよく動くし、増やしてみようとか、意外と量を増やしても大丈夫だなと思えて、80グラムでも90グラムでも『まあいいか』って思えるようになってきたんです。精神的なゆとりって大事だなと思いました。少しずつでしたが、前に進めた気がします」
今度は自分が誰かの役に立ちたい
管理栄養士になりたいと思ったきっかけの一つが、学生時代に保健センターの管理栄養士さんと交わしたやりとりだった。
「体重を増やさないといけないとは思っているけれど、必要以上に増やしたくない。納得いくものを食べたいという思いとの葛藤ですごく悩んでいて、やっと見つけた相談先で『何を食べたらいいですか?』って聞いたことがありました。そしたら『何でもいいですよ』って言われました」
おそらく『食べれるものならばなんでもいいから、とにかくしっかり食べてね』っていう意味だったのだと思う。
でも…当時の私には辛かった。
「こんなに悩んでやっと見つけて相談できたと思ったのに…」
気持ちをくみ取ってもらえなかったという思いがあった。
「それで思いました。栄養について学んで、自分で解決する方法を考えよう、同じように悩んでる人の力になりたいって」
食べる量やタイミングをコントロールできるように
「給食だと、自分では避けてきた食品や調理形態のものもあったり、多めに盛られたりするので量も多いこともあったんです。最初は『この量大丈夫かな』と思うこともありました。でも、自分が食べないのに、人に食べてとは言えないという思いで、覚悟を決めて食べていました」
今までと同じ食べ方をしたら体重は増える一方で「このままは嫌だな」との思いから、調整方法を考えて試していた。
「中学生の頃からいろんな食べ方を試してきて、運動との組み合わせ方とか、食べるタイミングとか、いろいろ実験してきたので、それをいかして調整できるようになっていました」
「今は、お昼は生徒と一緒に給食をしっかり食べて、夜は自分の状態に合わせて調整しています。たとえば、20時過ぎたら炭水化物を控えめにして、タンパク質中心にするとか」
走ることに対しても、未消化な思いが残っていたが今は楽しめるようになった。
昔みたいに食事に振り回されることは減った。
「ただ、今も摂食障害と『完全に縁が切れた』わけではないと思っています。食べたくないと思った時の考え方や、自分のペースがわかってきたって感じです。これからも環境が変わったら、また新しい付き合い方を探していきたいと思います」
メッセージ
同じように悩んでる方に伝えたいのは『その時の自分に合った付き合い方』を見つけることはとても大切ということ。
「私の場合、すごくたくさん試行錯誤しました。いろんな方法を調べて、試して、悩んで。その時は本当に苦しかったですが、今思えばその経験が今の私の力になってると思います」
回復の道のりは人それぞれ違うはず。
「『これが正解』みたいなものはないんじゃないかな。それぞれが自分のペースで、自分なりの方法を見つけていければいいなと思います」
mikanさんとお話してみたい方へ
mikanさんは摂食障害ピアサポート Ally Meの登録ピアサポーターとしても活動中です。
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