摂食障害とキャリア―それぞれの選んだ道―
――自己紹介をお願いします。
モモ:モモと言います。今日はよろしくお願いします。摂食障害は10代後半から20代前半までありました。働いた経験としてはアルバイトをしていたり、今はA型事業所で働いています。現在は別の障害者雇用の求人に応募中で、来週面接があります。
みどり:みどりです。司法書士として正社員をしています。副業で中小企業診断士や行政書士としても活動しています。摂食障害は高校から過食嘔吐が長く続き、30代後半くらいまであったと思います。よろしくお願いします。
すん:すんと言います。今はガバナンスコンサルタントとして正社員で働いています。大学3年のときに拒食状態になり、その時は痩せられてラッキーだと思っていたのですが、その後徐々に非嘔吐過食になりました。一時期は大学院にいましたが、入院などの治療、大学院中退後は企業のバックオフィス勤務を経て、今は内部統制構築支援の仕事をしています。よろしくお願いします。
摂食障害を抱えながら働いた経験

――「摂食障害を抱えながら働いた経験」について、お話を聞いていこうと思います。
モモ:20代前半に障害者の入居施設でアルバイトしていました。拒食になった時も、自分の摂食障害について話したことで、少し理解はありました。でも、特別な配慮はなく、周りから見られないようにお昼を食べるようなこともありました。今のA型事業所では最大4.5時間働いています。今はほぼ寛解状態ではありますが、会食恐怖というか、集団の中で食べるのが苦手なので、お昼休憩を取らずに勤務しています。
利用者の方をケアする立場でしたが、自分が摂食障害であることを利用者の方たちの前では隠さなければならないところが個人的には大変でしたね。普通のふりをしなきゃいけないというところと、やっぱり昼食の時間が利用者の方の支援とかぶってしまうようなことが、滅多になかったんですけど、いつ起こるかなってちょっと不安もありました。
みどり:一番症状があったのは27〜32歳くらいの頃で、弁護士事務所に勤務していました。就職氷河期でフリーターから司法書士を目指し、その後法律事務所で働き始めました。厳しい職場で、働いていても何だか自分が駄目だと思わされるような職場でした。ストレスもあるし、とにかく忙しくてお昼もデスクで食べる状態で、間食もすごくしましたね。徐々に体重が増えていくのもショックで、週に数回は過食してはもどすという状態でした。その時同棲していたパートナーにもばれないようにするのが大変でした。
――職場にも家族にも言えず、ご自身の中で処理されていたんですね。そこから転職を決意したきっかけは何だったのでしょうか。
みどり:一番は金銭的な評価でしたね。厳しい職場なのに給料が低く、自信のなさも上手く利用されてしまっていた気がしました。それで、自立したいという気持ちが出てきて、外資系の保険会社に転職しました。自由にはなるので、一応少しは楽になりましたが、営業で飲食の機会も多く、体重が増えるストレスはすごくあって、症状もずっとありました。
――今の、個人事業主として働きながらもどこかに所属されるというような働き方に落ち着いた背景には、どういったことがあったのでしょう?
みどり:最初の法律事務所は人が多く、人間関係が得意じゃないと気づきました。いろんな失敗を通して、自分の得意・不得意、やりたいことやりたくないことは何だろうと知っていきました。カウンセリングやインナーチャイルドワークを受ける中で、今の働き方にたどり着いた感じですね。
――ありがとうございます。すんさんはいかがでしょうか。
すん:二つの職場の経験をお話ししたいと思います。まずは経営コンサル時代で、拒食から過食へ移行していった時期でした。その時は全然自分が病気だなんて思っていなくて、カミングアウトも何もないという感じでした。当時のコンサルはブラックな世界で、始発で行って終電で変えるというような日もあり、ストレスも溜まりました。人目があるところではあまり食べず、その分人目がないところであったり、一人で残っている時に、疲れているけれどとりあえず働くために、自分を鼓舞するために食べ続けるようなこともありました。どんどん太っていくのが辛くて、ひとりで泣いていることもありました。その後、大学院を経て経営企画として再就職しましたが、人前で食べるのがかなりしんどくて、社内で親睦会のようなものがあったら怪しまれるだろうなと思ったので、二次面接のタイミングで、摂食障害があるけれど業務には支障はありませんという形で伝えました。それで人前では食べないキャラを何とか通して過ごしていました。
――カミングアウトって結構勇気が要ることなんじゃないかと思いますがいかがでしたか?
すん:元々嘘をつけないタイプということもありますけれど、怪しまれるくらいなら最初から言っておいた方が良いかなと思いながらカミングアウトをしていました。
――非嘔吐過食だと、体型が変わっていくことに対するしんどさもあったかと思いますが、出社しなければならない行事とか出社が中心の環境だったりとか、そのあたりはどんな風に調整されていましたか。
すん:二つ目として話した職場の時は、病識もあり自分の中で整理できていたんですけれど、1社目の方では、拒食から過食に移行していた時期だったので、50kgを超えたらどうしよう、もう一生太り続けるんじゃないか、というような感覚がありました。コンサルで客先常駐もあったので、拒食の時に買ったキツキツのスーツを無理矢理着るような状態で、2、3日に一度はトイレに籠って泣いていたような感じでした。
――しんどい時期から、転職をしようとか、自分で病気のことを話してそれでも受け容れてくれる会社に入ろうとか思ったきっかけがあれば教えてください。
すん:今お話しした二つの経験の間に、2年間くらい大学院に行っていた時期があり、その間に入院を2回経験しました。その時に、とりあえず頑張っていれば何とかなるみたいな考え方から、ある種、身の丈に合ったというか、頑張るだけが価値じゃないみたいなところを模索しても良いかもしれないというように感じたのがきっかけになったと思います。
職場にカミングアウトする?しない? …「わたしらしく働く」を見つけるまで。— 摂食障害とキャリアのリアル② へ続く