










吐いてなくても摂食障害!?
すももちゃん、自分でもコントロールできないくらい食べてしまう病気があるって、聞いたことあるかな?
今調べてたところだけど、「摂食障害」とか「過食症」とかいうのは聞いたことあるな…食べた後に吐いちゃって痩せちゃう、みたいな…私みたいに、ただたくさん食べちゃうだけっていうのは関係ないかなって思ってたけど。
確かに、摂食障害の中には、食べた後に吐いてしまうという症状のあらわれ方や、見た目が痩せ型になるタイプもあるね。一方で、摂取カロリーを帳消しにしようとする「代償行為」として、過食の後に絶食や極端なカロリー制限をしている人や、標準体重以上の人も、摂食障害、神経性過食症と診断されることがたくさんあるよ!
神経性過食症…知らなかった。吐いてなくても、痩せてなくても、摂食障害の可能性があるってことなんだね。
病気の診断としては、まず3か月以上、少なくとも平均週1回の頻度で過食をしてしまっていたら、過食症と考えられるんだけど…すももちゃんは、当てはまるところないかな?
確かに、過食は頻繁にしてて、止められないの。私の場合、夜に食べ過ぎてしまうことが多いから、次の日の朝は食べないで、昼はサラダだけにしようとしたり…でも、完全に絶食出来てるわけじゃないよ。これでも、摂食障害のひとつってこと?
うんうん。高頻度の過食を自分の意思では止められなくて、そのあとに罪悪感などで一定時間の絶食をしようと試みているなら、摂食障害、過食症の状態になっていると言えるんじゃないかな。
そうなんだ…私、摂食障害って、食べてから吐いて痩せてる人の病気だと思ってた。だって、痩せてるときは心配していた友達も、太ってきたら「元気そう」って言ってたから…自分で食べて太っている私は、周りから見たら食べることが大好きな、健康そうな人に見えるんだって。こんなに食事のことで悩んでるのに、周りは悩んでいるなんて思ってもいないだろうなって考えると、自分が病気だなんて思えなくて。
確かに、痩せ型じゃない過食症の当事者さんの中には、病気だと認めることに後ろめたさを感じる人もいるみたいだね。けれど、見た目が痩せ型でなくても、自分の意思でコントロールできない過食は、本人にとっては苦しいものだよね。すももちゃん自身も、自分のしんどさそのものは、認めてあげてほしいな。
うん…自分のこと、病気だなんて思っちゃいけない、って感じてたけど、実際はすごく辛かった。
あともう一つ。過食するとき、人に見られるのが恥ずかしいから1人の時だけ過食したり、お腹が空いているわけじゃないけれど大量に食べたり、いつもよりずっと短時間で一気に食べてしまうというのが、過食症の特徴だよ。これはすももちゃん、当てはまるかな?
人に見られたくなくて1人でこそこそと食べたり、たくさん食べたばかりなのにもっと食べ物を口に詰め込みたくなったり…うんうん、私もそんな感じ。食べたくないのに食べるのが止められないの。
過食してしまうのはなぜ?
私が摂食障害、過食症かもってことは分かったよ。自分でもそうかもって思う。けど、じゃあどうしたら過食を止められるのかな?ダイエットと同じで、食べ過ぎないように食事を記録したり、食べ方を工夫するとか、やってみてはいるんだけど…
過食を止められなくなる仕組みには、2段階あるんだ。まず、無性に食べたくなる「過食衝動」、その次に食べだしたらとまらなくなってしまう「コントロール障害」。どっちも対処が難しい問題だけど、食事の記録をつけて、どんな時に過食衝動が出やすいのかに気づくこと、過食衝動やコントロール障害が出にくくなるような食事の工夫をすることは大事なことだよ!
でも、いくら記録しても食べ方を工夫しても、辛いときには「もうどうなってもいいや!」って自暴自棄になっちゃって、過食しちゃう。後で後悔するんだけどね…
そうだよね。食事を管理しようとしてもうまくいかないとがっかりしちゃうよね。食事の記録や食べ方の工夫以外に、もう一つ大事なことがあるよ。それは、症状の根本を理解すること。
症状の根本…?うーん、何だろう。
その「症状の根本」として主なものは2つあるんだ。
まず1つ目は、過食がストレス発散になっている場合。日常生活で溜まったストレスは、誰かと会話をしたり、趣味や運動とか旅行とか健康的な発散方法があるよね。でも気持ちに余裕がなくてストレスを溜めておけない時は、独りで直ぐに解消できる方法として、過食は便利な方法といえるかもしれない。こんな風に、ストレス発散として過食を繰り返す場合は「むちゃ食い症」と診断されることもあるよ。
日常生活のストレス対処…ストレス食いってよく聞くけど、食べる量とか食べ方がもっと極端になっちゃっている、みたいなイメージかな。
2つ目は、自己評価が低かったり、何かに行き詰まったときに、自分の価値を体重や体型で測るようになってしまうこと。もっと痩せたい、痩せないといけないと思って無理なダイエットをすると、その反動として過食が出てしまうことがあるよ。
瘦せたい気持ちがあって、なのに過食をしてしまうって…もしかして私のこと?
そうだね、すももちゃんの場合は、2つ目の方に当てはまりそうだね。
このパターンの場合、過食した後に、強い痩せ願望から嘔吐してしまったり、下剤を乱用したり、過剰な運動や極端な絶食などで摂取したカロリーを帳消しにしようとする「代償行為」を伴うこともあるんだ。こういったパターンは「神経性過食症」と診断されることが多いよ。根本原因が体重や体型へのこだわりや自己評価の低さだから、治療する上でも、どうして体重・体型にこだわってしまうのか、自己評価が低いのはいつから、なんでなのか…などにフォーカスを当てる必要があるね。
つまり、痩せたい気持ちよりも、日常のストレス対処として過食を繰り返してしまうのが「むちゃ食い症」で、痩せたいって気持ちからダイエットをしてしまって、その結果として過食と代償行為を繰り返すのが「神経性過食症」、なんだね。
そうそう!ただ、強い痩せ願望があっても代償行為は抵抗があってできない、という人もいるから、はっきりと区別が付きにくいところもあるんだ。過食や代償行為の背景に、痩せてない自分は価値がないという気持ちと体重・体型へのこだわり、強い痩せ願望があるかどうか?・・・で診断名を分けることで、正しい根本原因にアプローチすることが必要なんだね。
なるほどね…「根本に何かある」って言われると、ちょっと気持ちが楽になる感じがする。皆にも痩せているときより元気そう、って言われたから、痩せるまで一人で頑張らなきゃいけないんじゃないかなって思っちゃってた。
「一人で頑張らなきゃいけないんじゃないか」、すももちゃんはそう思っていたんだね。
「食事をコントロールできないのは本人の甘え」「痩せたいだけのわがままダイエット病」と言われることもあるけど、本人が甘えているとか、精神が弱いとか、ただそれだけでかかるものではないんだ。強いストレスや幼少期の体験、強いルッキズムの風潮…色々な要因が絡まって、摂食障害という病気に繋がると言われているよ。だから、過食症は一人で頑張って何とかしようとすると、逆にもっと辛くなってしまうこともある。自分の意思で過食をしている、ではなくて、摂食障害という病気が、すももちゃんを過食に走らせてしまう…そんな風に、病気を自分の外に出して、1人で対処しきれない病気の部分を認識できると、少し楽になるんじゃないかな。
うーん。私、本当は一人じゃ背負いきれないものを、一人で背負って何とかしようとしてるってことなのかな…。
そうそう。ダイエットに成功していたはずなのに、過食がひどくなって急に体型が変わってしまったり、食事をコントロールできないという感覚に囚われたり、本当は苦しいのに表向きには明るく振る舞おうと努力したり…今まで辛い思いを一人で抱え込んできたんじゃないかなあ?
自分が弱い、甘えているんじゃなくて、自分は病気で苦しんでいるんだと、自分で認めてあげることが、楽になるための第一歩かもしれないね。
おわりに
神経性過食症は、食事の食べ方が乱れて苦悩が大きいにも関わらず、体重が正常範囲内で外見上は健康そうに見えるため、「病気ではない」「治療の対象ではない」と思っている方もいます。しかし、過食を自分で止めることができないことは、心や体の大きな負担になります。過食は本人のわがままや忍耐の足りなさの問題では決してありません。過食を止めるためには、本人および周りで支える方の正しい理解が必要ですので、専門の先生とよく相談して治る一歩を踏み出しましょう。