専門家でなくても、理解者として見守れる立場になるということ――職場の方の摂食障害経験を経て
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専門家でなくても、理解者として見守れる立場になるということ――職場の方の摂食障害経験を経て

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「心配だけど、どう声をかけたら良いか分からない」「逆に傷つけてしまったらどうしよう…」親しい仲だからこそ、どう接したら良いか分からなくて不安になる、友人やパートナー、職場の方の摂食障害。
今回は、そんな「周辺で見守る立場の方」へのインタビューを通して見えてきた、摂食障害の方へのサポートの形を記事にしました。
この記事に紹介されている人のプロフィール
晴香さん、なつきさん

晴香さん
なつきさんの職場の上司。なつきさんが大学生でアルバイトをしていた時からの知り合い。

なつきさん
14歳から拒食、18歳頃から過食、24歳頃から主に過食嘔吐。現在も症状を抱えつつフルタイムで就業中。

少しずつ打ち明けてくれた——異変に気づいたきっかけ

なつきさんと初めて出会ったのは、彼女が大学生アルバイトとして働いていた頃でした。摂食障害については、本人から打ち明けられた形で知りました。

仕事中に不安から泣いてしまうことなどもあり心配していましたが、仕事終わりに話を聞く時間を持つ中で、ぽつりぽつりと話してくれました。正確なタイミングは覚えていませんが、知り合って少し経った頃だったと思います。

「操られているように見えた」——そばで見た摂食障害

なつきさんは、とにかく苦しそうに見えました。自分を思うようにコントロールできず、何かに操られているような、支配されているような。

食べたくないのに食べてしまう、太りたくないから吐いてしまう、いけないと分かっていてもやめられない——。そうした話を聞く中で、体調を崩したり、強い罪悪感にさいなまれたりする姿も目にしてきました。体型も、ほっそりしたりふっくらしたりを繰り返していたように思います。

なつきさんのことはとても心配でした。特に、職場の上司と部下という関係はありながら、なつきさんはそれ以上に近しい存在だったように感じています。

苦しんでいる様子を見ると、入院して専門家に助けてもらった方がいいのでは、と思う一方で、仕事ではとても助けられていたので、長く休まれると正直困る……という気持ちの間を行ったり来たりしていました。「本人の意思と、体と心」を一番に優先してあげられたらと思いながら、接し方を考えていました。

知識がない中での戸惑いと模索

なつきさんから摂食障害の話を聞くまで、摂食障害についてほとんど知りませんでした。ただ、なつきさん自身がすでに自分の状況を理解し、必死に「闘っている」様子だったため、その状態をまず受け止めようと考えていました。

そこから、自分なりに調べたりはしましたが、正しい接し方が分からない不安はずっとありました。詳しい人に相談できていたら、もっと良い関わり方ができたのかもしれない、と思うことはあります。

それでも、今振り返ると、専門家じゃなくても、できることはあると思います。「いつも見てるよ」「大事に思っているよ」「何でもいいから話を聞くよ」という気持ちを持って、隣にいること。それさえできれば十分なんじゃないかと思います。

周辺者としてのしんどさと孤独

接する時間が増えることで、私自身も、受け止めきれなくなり、パンクしそうになったことがあります。つらい症状を近くで見続けることで、自分の力のなさを感じて落ち込みました。

しかし、その苦しさを誰かに相談することはほとんどできませんでした。この気持ちを分かってくれる人はいないと思ったし、デリケートな内容なので、誰にでも話せることではないと感じていました。

今振り返ると、「私がなんとかしてあげたい」なんて大それた考えは手放して、「少しでも安心してもらえたらいい」くらいの気持ちでいた方が、気負わずにそばにいられたんじゃないかと思います。

だから、「役に立っていないのではないか、助けになっていないのではないか、という不安」は、一人で抱える必要はないと思います。

今でも私自身の関わりがなつきさんにとっての助けになったのか、正直分かりません。それでも、「あなたのおかげ」と言ってもらえることがあると、そっとそばで見守ってあげることができたのではないかと感じ、素直に受け取るようにしています。

同じ立場の方に伝えたいこと

知らないことに出会うと、戸惑うし、どう接すればいいか分からなくなります。でも、相手を思って考え、行動したことや発言したことは、何らかの反応として必ず返ってきます。その反応を受けて、次の行動を考えればいい。もし間違えたら、謝ればいい。相手の思いや考えを聴けばいい。

お互いを思いやる気持ちがあれば、専門家でなくても、何らかの形で助けになることはできると思います。摂食障害は、いつ誰がなるか分からない病気だからこそ、「もし自分だったら」「もし身近な人だったら」と想像してみることも、大切だと思います。

本人(なつきさん)からのコメント

私が今の職場で6年間仕事を続けられているのは、晴香さんの存在があったからだと思います。

摂食障害は見た目や仕事ぶりだけでは分かりにくい一方で、心と身体の両方に大きな負担がかかり、思考や感情の揺れも自分ではコントロールしにくい病気です。不安が強い時には誰かに強く寄りかかりたくなってしまい、関係性に影響が出ることもあります。

それでも晴香さんは、気合いや自己管理の問題としてではなく病気として理解しようとし、必要な距離を保ちながらも見捨てない姿勢で関わってくれました。

その関わり方は、依存させる優しさではなく、自分の足で立つことを支える優しさだったと感じています。私は、安心感のある関係の中だったからこそ、自分の調子と仕事の折り合いをつけることや、自分の気持ちを見ることに少しずつ挑戦できたのだと思います。

摂食障害は孤立しやすい病気ですが、理解しようとしてくれる人が一人いるだけで、働き続けられる可能性は大きく変わるのだと実感しています。