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心の病院ってどんなところ?―摂食障害の回復に寄り添う通院体験談―

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摂食障害や「食べることがこわい気持ち」で悩んでいても、「精神科や心療内科に行くのはちょっと怖い」「自分は通院するほどじゃないのでは?」と感じたことはありませんか?
2025年12月7日のウェビナーでは、摂食障害の経験を持つ登壇者が、実際に精神科・心療内科に通院したときのリアルをお話ししました。
通院を決めたきっかけや、受診前に感じていた不安、初めての診察での印象や医師との関わり、通院が回復にどう関わったと感じているか…通院経験者の率直な話を知ることで、「通院すること」や「専門家に助けを求めること」を少し身近に感じてもらえたら幸いです。
この記事に紹介されている人のプロフィール
かーこさん、もんちさん、すんさん

◎かーこさん
13歳より拒食、運動強迫を経験。 
発症後、精神科に6年程通院。通院中、カンセリングや2回の転院を経て、ほぼ寛解。
現在は一般企業で働いている。

◎もんちさん
15歳より拒食症を発症し、過度な食事制限や運動脅迫を経て、徐々に過食症に移る。
心療内科に約1年半通院し、その中で拒食時、過食時共に1回ずつ入院を経験。
現在は、自己理解を深めると共に通信制高校に通学し、寛解へ近づいていっている。

◎すんさん(司会)
20歳頃より拒食を経験、その後徐々に過食へ移行。
病識を持ち始めた28歳頃より精神科への通院を開始。その中で休養目的の入院を二度経験。
現在、過食の症状は寛解しているものの、抑うつ状態の経過観察のため精神科への通院を継続している。

どういうきっかけで精神科や心療内科への通院が始まった?通院前の「精神科や心療内科」へのイメージは?不安はあった?

もんちさん:突然「心療内科」に行くことになった不安と嫌悪感

私が病院に行くことになったきっかけは、「摂食障害かもしれない」と思ったからではありませんでした。ダイエットをしすぎて体重が一気に落ち、このままじゃまずい、学校にも通えなくなるかも…という感覚で、とりあえずかかりつけの内科に行ったんです。正直、自分がそこまで危ない状態だという自覚はほとんどありませんでした。
しかし、そこで点滴が必要と言われ、たまたま居合わせた精神科の先生が、大学病院の心療内科への紹介状を書いてくださったんです。内科に来ただけのつもりだったのに、突然「心療内科」と聞いて、ものすごくショックを受けました。点滴でカロリーが入ること自体が怖かったのに、さらに心療内科なんて…当時の私には「閉鎖病棟に入れられるんじゃないか」「自分は精神的におかしい人なんだ」というイメージしかなくて。そもそも自分が病気だとも思っていなかったので、不安と嫌悪感がとても強かったです

かーこさん:「私はこんなに辛かったんだ」と感じた初診経験

私が病院に連れて行かれたのは、小学6年生から中学1年生くらいの頃でした。自分では何も考えていなくて、気づいたら親に地元の内科に連れて行かれて、「ここじゃないね」と言われて、児童向けの精神科を紹介された、という流れです。
正直、その時は「病院に来たなあ」くらいの感覚でした。
でも、その精神科の初診で、人生が少し変わりました。親は同席せず、先生と一対一で話す時間があって、ダイエットも勉強も「頑張らなきゃ」と張り詰めていた気持ちを、初めて言葉にできたんです。話しているうちに、「私、こんなに辛かったんだ」と気づいて、頑張りすぎている状態が異常なんだと初めて理解しました。
病名を聞いた時は、安心した気持ちもありました。ただ、「精神科に通っている」という事実は、当時も今も、人に胸を張って言えるものではなくて。その点だけは、ずっと引っかかっています。

実際通院してみてどうだった?医師との相性は?転院などは経験した?

かーこさん:何も隠さなくていい、週に一度の解放される時間

私はこれまで3つの病院に通いました。児童向けの病院を経て、大人も通う病院に2つ。
その中でも印象に残っているのは、医師とカウンセラーさんの両方がいる病院です。そこでは、家族にも友人にも言えなかった本音を、全部話すことができました。運動強迫で「やめたいのに、やめたら怖い」気持ちや、「食べなきゃいけないと分かっているのに一口が食べられない」葛藤。そういうモヤモヤを、遠慮せず吐き出せたんです。
友人には病気のことを話せず、親にも気まずさを感じていた私にとって、「絶対に否定されない」「遮られない」空間は本当に貴重でした。特定の言葉が刺さったというより、雰囲気そのものが「何でも話していいよ」と伝えてくれている感じ。週に一度、その時間だけは脅迫からも解放されて、心が休まる。プライドも取り繕いもいらない、ただの自分でいられる時間だったと思います。

もんちさん:最初は怖かった病院が、安心できる場所になるまで

私の通院の始まりは、正直かなり特殊でした。大学病院を初診で受診したその日に、「通院じゃなくて、まずは入院してください」と言われたんです。心の準備もできていなかったので、最初は怖くて仕方なかったですね。
入院中は体重を増やすことが目標で、食事の量や内容が変わっていくたびに不安が強くなりました。結局、恐怖に耐えきれず途中で退院してしまったんですが、今振り返ると、もう少し頑張ってもよかったのかなと思うこともあります。
ただ、入院中に主治医の先生や看護師さん、学生さんまで含めて、チームで関わってもらえたことで、病院への恐怖心は少しずつ和らいでいきました
退院後の通院では、週に一度先生と話す時間が本当に支えでした。最初は正直なことを話すのが怖かったけれど、思い切って話してみたら、通院そのものが少しずつ楽になっていった。病院は「何をされるかわからない場所」から、「自分の気持ちを置いていける場所」に変わっていった気がします。

精神科や心療内科への通院は治療にとってどういう役割を果たしたと思う?

もんちさん:病院は「行き続ける」だけが答えじゃない

私にとって病院に通うことは、治療の中ですごく大事な役割を果たしていました。拒食と過食で入院も経験して、専門家に守られた環境で話せること自体が、心の支えだったと思います。
一方で、過食の入院を終えたタイミングで主治医が変わり、「合わないな」と感じたこともありました。
入院中、同じ摂食障害でも先生との相性が人それぞれ違うのを見ていたからこそ、無理に続けなくてもいいのかもしれない、と考えたんです。体重やBMIが安定して命の危険が少ない状態だったこともあり、一度通院をやめて自分で頑張ってみようと決めました。行くのをやめてよかった面もあれば、やっぱり病院は大切だったなと後から思うこともあります。
だからこそ、通院する・しないも含めて、その時々の自分に合った選択をしていい場所なんだと感じています

かーこさん:診断名がくれた「変わっていい」という許可

正直、病院に行かずに体重だけ増やせていたとしても、考え方や強い脅迫感はきっとそのままで、ずっと苦しかったと思います。
通院して病名をつけてもらったことで、「これは性格の問題じゃなくて病気なんだ」と自覚できたことが、私にとって大きな転機でした。
治ったきっかけが通院そのものだとは思っていませんが、行かなければ何も変わらなかったとも感じています。話を聞いてもらえる場があって、頑張りすぎている自分を認めてもらえたことで、「完璧じゃなくてもいいかもしれない」と少しずつ思えるようになりました。
何でも100%でやらなきゃ、という考えに縛られていた私にとって、通院は自分の環境や生き方を見直すための大切なスタート地点だったと思っています

これから通院を考えている方へのメッセージ:摂食障害で苦しんでいる方に「精神科・心療内科に行った方が良い」と言ってあげたいと思いますか?

もんちさん:その一言が、病院へ向かうきっかけになる

私は、摂食障害で苦しんでいる人がいたら、「病院に行った方がいいよ」って、ぜひ言ってあげてほしいと思います。
強制みたいに聞こえてしまうかもしれないけれど、その一言で「行っていいんだ」「行った方がいいんだ」って気づく人は、きっといます
実際に私自身がそうでした。友達が「病院に行った方がいいんじゃない?」と言ってくれたから、親に自分の状態を話すことができたし、通院につながりました。周りの摂食障害の知り合いからも、「もっと早く行けばよかった」という声を何度も聞いてきました。
そういう経験を見聞きしてきたからこそ、迷っている人には、ぜひ背中を押してあげてほしいと思います。

かーこさん:通院は「治す魔法」じゃなく、支えの一つ

私は、通院さえすれば必ず良くなる、とは思っていません。でも、私にとって病院に通う時間は、確かに救いでした。だから「行ってみたらどう?」と伝えてもらえるのは、悪くないと思っています。
ただ、病院に行ったから治った、という単純な話ではなくて、自分の今の状態を少しでも良くするための手段の一つ、という感覚でした。
だからこそ、「治さなきゃ」と気負いすぎず、もう少し軽い気持ちで行ってみる、くらいでいいんじゃないかなと思います。通院は正解でも不正解でもなく、その人に合うかどうかを確かめる一歩だと思っています。

すんさん:病院とつながることで、選択肢が増える

私も、主治医との相性に悩んだことは正直ありますし、病院がすべてだとは思っていません。でも、病院とつながっていたからこそ、気分が大きく落ちたときに助けてもらえた経験がありました。そういう意味で、「行ってみる」という選択肢は一つあってもいいのかなと思います。
その上で、私の場合はカウンセリングでじっくり話すことが合っていると感じました。病院に行くことで、「通院だけじゃない」「こんな選択肢もあるんだ」と視野が広がることもあります。まずはつながってみることで、自分に合った道が見えてくるのかもしれません。