OBOG訪問 じゅんこさん
OB・OG訪問室

満たされない気持ちを食べることで埋めようとしていた高校時代の私

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幼少期から自己否定の感覚を抱えて育ったじゅんこさん。高校時代に制限型拒食と過食嘔吐を経験し、心の満たされなさを食べることで埋めようとしていました。母親となった今、過去の経験と向き合いながら、自分を大切にすることの意味を見つけるまでの過程をお話しいただきました。
この記事に紹介されている人のプロフィール
じゅんこ・50代

働きながら中学生の娘さんを育てられています。高校時代に制限型拒食になり、その後、過食嘔吐や下剤使用も経験されました。大学進学とともに部活動に打ち込むことで症状が改善。現在は過去の経験を振り返りながら、自分自身を労わることの大切さを見出しています。

幼稚園の頃から始まった自己否定の感覚

—— 幼少期はどのようなお子さんだったのでしょうか?

私の摂食障害は、幼少期の出来事が関係していると思います。幼稚園生の頃から、家族が私のことを「ダメな子だ、困った子だ」と思っているように感じていました。次女だったので、「ノロい」とか「早くして」とか、そういうことをよく言われていました。「こうしたい、ああしたい」って言うと、母からは「変だ」って言われることが多かったんです。

今でいうHSPのような特徴があって音や匂いにも敏感だったんですが、そんな時に「この音が聞こえる」って言ったら「何それ、変なの」と言われることが多くて。そこから自分は変なんだって思い込むようになりました。当時の私は、自分が否定されているとは気づいていませんでした。ただ、自分は人と違うんだろうなと思って過ごしていたんです。

—— 摂食障害が始まったきっかけを教えてください

中学生の頃は部活をやっていて忙しかったので、特に食べ物のことで悩むことはありませんでした。痩せたい、可愛くなりたいっていう気持ちはあったと思うんですけど、それほど強いこだわりはなかったんです。

でも高校に入って状況が変わりました。女子校に入って、いわゆる一軍の女子のキラキラした感じと自分との違いを感じて、劣等感を抱くようになって。友達との会話では、ダイエットとか髪型のセットとか、見た目をよくしたいみたいな話題が中心でした。当時はダイエットがブームだったんです。ただ、食べることも好きだったので、「ダイエットしないと」とみたいな気持ちもありつつ、授業の間に購買にパンを買いに行ったりもしていました。

部活もなくて時間があったので、食べれば食べるほど体重が増えていって、「どうしよう」みたいな焦りも出てきました。太っちゃった、食べちゃった、またやっちゃったみたいな、そんな風に追い立てられるような気分でした。食べたい気持ちと痩せたい気持ちの板挟みで、自分がどんどん嫌になっていく感覚がありました。家庭でも、もともと何かと注意される立場にいたのもあって、自分で自分を追い込む気持ちを持っていたと思います。そんな感情が絡み合って、食べ物との関係がおかしくなっていったんだと思います。

食べることで埋めたかった気持ち

—— その後、行動に変化はありましたか?

りんごだけを食べたり、自分の分だけ肉を湯がいて油を抜いたりしてダイエットを始めました。でもその反動なのか、お菓子を沢山買い込んで、テレビを見ながら何袋も食べちゃって。その後、口に指を入れて吐くとか、下剤を飲んで全部体の中から出すとか、そういうことをやった時期があります。

キッチンを使う時に親とよく顔を合わせていたんですけど、「いい加減にして」みたいなことを言われていましたね。食べて吐くことは見て見ぬふりみたいな感じでした。「またやってるよ」と思っていたんだと思います。私も当時は親のことを拒絶していました。親からも否定されて、自分でも自己否定していて、否定のループみたいになっていました。

—— 当時の心境について、詳しく聞かせてもらえますか?

過食は誰かに見せるためにやっていたわけではなくて、自分の心を満たすためだったと思います。ストレスのはけ口というか。食べている間だけは、嫌な気持ちを忘れられるような感覚がありました。

思い返してみると、私が過食をしていた時間帯って、ちょうど母が一番忙しい夕方だったんです。仕事から帰ってきて、買い物をして、急いで夕食の準備をしなければいけない。家族は皆お腹を空かせているのに、誰も手伝ってくれない。母はそのイライラを物にぶつけているような状態でした。今思えば、母の大変さも理解できるんですけど、当時の私はその夕方の時間がすごく居心地悪くて。そんな中で、私はリビングでテレビを見ながらお菓子を食べ続けていました。キッチンにいる忙しい母を見ながら、何となく嫌だなと思いつつ、でも食べることをやめられない自分がいました。

心の奥に満たされない気持ちがあって、その空虚感を何とか埋めたくて食べていたんだと思います。安心感がほしかった。食べることで、少しでもその寂しさを紛らわせたかったんです。

大学での環境の変化

—— 大学入学後、症状はどのように変化していったのでしょうか。

大学に入って体を動かす部活を始めたら、症状が徐々に落ち着いていきました。通学にも時間がかかるようになって、過食をする時間がなくなったんです。チアリーディングのような活動をしていたので、ユニフォームを着ることを考えて、自然と食べ過ぎることもなくなりました。

ただ今振り返ると、依存の対象が変わっただけだったように思います。20歳からはタバコに依存するようになって、それが30歳まで続きました。社会人になってからは、今度はお酒で、飲み過ぎてばかりいました。でも、食べて吐くという行為は大学に入ってからはなくなりました。

—— その後はご自身の体調と、どのように向き合われていますか。

摂食障害が落ち着きしばらく経ってからも体の不調に悩まされるようになっています。過敏性腸症候群のような症状で、お腹がとても弱くなってしまって。最初はストレスが原因だと思ってましたが、よく考えたら、摂食障害の時期に下剤を何錠も飲んだりした影響もあるのかもと気がつきました。

過食をやめられない苦しさは、本当によくわかります。やめたいのにやめられないですよね。私も当時はそうでした。

私は運よく環境の変化等でやめることができましたが、今でも続く不調も、当時を振り返りつつケアし始めてから、ようやく落ち着いてきました。当時の自分の身体が悲鳴をあげていたことに「ごめんね、あの時は本当に雑に扱ってしまったね」と言いながら白湯を飲んだり、なるべく身体に優しいことを取り入れるようにし、やっと落ち着き始めています。

娘との関係で気づいたこと

—— 現在お子さんがいらっしゃるとのことですが、子育てをする上で意識されていることはありますか?

現在、中学生の娘がいます。娘が小さい頃、保育園に入れなくて二人きりで過ごしていた時期があったんですが、その時は私も精神的に余裕がなくて、正直きつく当たってしまったこともありました。少し離れただけで泣いてしまう子だったので、私も最初は疲れてしまうことが多くて。周りにはあまり相談できなかったので、一人で抱え込んでいました。

その後反省し、「娘が落ち着くまでは、おんぶや抱っこなどをしつつ、とことん近くで過ごすことにしよう」と、腹を決めて、なるべく育児で煮詰まらないよう気分転換の外出をたくさんしながら、家でも外でもいつも娘とセットで過ごしました。小学校に入ったくらいから、ようやく娘も落ち着き、私も少しずつ外で働くことができるようになりました。

私は、否定されてきた経験が重なったせいか、親からの褒め言葉は素直に受け取れませんでした。どこか嘘っぽく感じてしまっていたんです。同じように私自身も、娘を心から認め褒めてあげられているか、分からない不安があります。夫との関係もあまり良いとは言えず、夫との喧嘩等で、娘を傷つけてしまったことも心配しています。だから娘には、「もし将来大人になって、『なんで私はこんなことで悩んでいるんだろう』って思うことがあったら、それは子供の時の家族関係が影響しているかもしれない。それに、お母さんの言葉の影響が大きく残ってしまうはずだから、その時は、『お母さんの言葉にはたくさん間違いがあったから、そこから抜け出していい』と思ってね」と伝えています。

親になって初めて、自分が親から受けた言葉の影響の大きさに気づきました。娘には同じ思いをさせたくないけれど、常に完璧な親でいられるわけでもない。だからこそ、親には間違いがたくさんあるということは伝えていきたいと思っています。

同じ痛みを抱える人たちへ

—— 同じように悩んでいる人に向けて、伝えたいことはありますか?

今、摂食障害で悩んでいる人は、何かしら過去に辛い体験をしているかもしれません。「早く食べなさい」と急かされたとか、食事の時間が嫌な思い出になっているとか。そういう小さい頃の体験を振り返ってみると、少し心が軽くなることもあると思います。

「自分を大切に」ということは簡単ですが、実際にはとても難しいですよね。でも、そういう気持ちを自分に向けることは大切だと思うんです。今までそれができない環境にいたはずだから。なので、完璧な答えはないかもしれませんが、「あの時は辛かったね」と当時の気持ちに寄り添ってあげて欲しいです。

そしてぜひ、無理をさせてしまった自分の身体にも、「あの時は無理をさせてしまってごめんね、今までがんばって生きてきてくれてありがとう」と言ってあげて欲しいです。自分の心と身体を労ることが、少しでも前に進む力になるのかなと感じています。

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