OBOG訪問室~ももさん~
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「かわいくなりたい」から始まった摂食障害との7年間 ー 大学生が見つけた”自分らしい”回復への道のり

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メイクをして褒められることに喜びを感じ、さらなる承認を求めて食事制限を始めた高校生時代。中学時代から続いた容姿へのコンプレックスを抱えながら、現在大学生のももさんは、完治にこだわらない、自分らしい回復の形を見出してきました。長い葛藤の末に見えてきた、ありのままの自分を受け入れるまでの道のりをお話ししていただきます。
この記事に紹介されている人のプロフィール
ももさん・20代女性

高校1年生から制限型拒食を発症。3年生で少し落ち着くが、自分の容姿に対する強いコンプレックスから醜形恐怖のような症状への悩みは継続してきた。大学時代はストレスがかかるとチューイングをするようになったが徐々に寛解。就職活動を経てこれから社会人生活を始めるところ。休みの日は友人と会ったり、外に出かけたりすることが多い。
*ピアサポーターとしても活動中。ももさんとお話してみたい方はピアサポートサービスAlly Meページからお申し込みください!

人間関係の悩みが容姿への不安に変わった時

—— まず、摂食障害が始まったきっかけから教えてください。

中学生の頃、部活での人間関係に悩んでいました。

私にきつく当たってくる人たちが部内にいたんですが、その人たちはみんなから「かわいい」と言われるようなタイプだったんです。今振り返ると、他にも色々な要因があったと思うんですが、当時の私は単純に「私の見た目が悪いから、こんな扱いを受けるのかもしれない」と考えるようになってしまって…。

その頃、学校では、痩せていてストレートヘアの子が「かわいい」とされていました。でも私は生まれつき癖毛で、親も縮毛矯正をするのは許してくれませんでした。「周りが求める基準に自分が当てはまらないから、受け入れてもらえないんだ」。そう思い込んだまま高校に進学したんです。

「かわいい」と言われた喜びが生んだ食事制限

—— 高校に入った後、何か変化はありましたか?

校則がゆるい高校に入学して、メイクを覚えたんです。初めてメイクをして学校に行ったら、今までにないくらい周りから注目されて…。女子高だったんですが、近くの男子校の人たちからも声をかけられるようになりました。その時に初めて、人から注目される体験をしたんです。そして徐々に、もっと認められたいという気持ちが強くなってきました。元々痩せ型の体質だったんですが、この体型だけは絶対に維持しなければいけないという強迫観念のようなものが生まれてしまったんです。

—— そこから、どのような行動を取るようになりましたか?

食事を制限するようになりました。朝と昼は食べずに、夜だけ決まった量を食べるという生活になったんです。さすがに夕食はちゃんと食べるようにはしていたんですが、揚げ物が出たときには衣の部分を取り除いて食べたりしていました。たまにおやつを食べることもあったんですが、カロリー表示のある、決まったものを少しつまむ程度でした。カロリーが明確にわかるものじゃないと不安で、分からないものは避けていたんです。容姿にも極端にこだわっていて、授業が終わるごとにメイクを直したり、体型を維持することにも必死でした。 

—— 高校3年生の受験期はどのように過ごされていましたか?

受験期に入ってから、「見た目のことばかり考えていたら受験に集中できない。まずは受験を終わらせてから、ダイエットや美容のことを考えよう」と決めました。この決断のおかげで、食事に対する偏った考え方が進行するのを防げたんだと思います。

部活と受験勉強でとても忙しく、あまり食べなくても空腹感を感じませんでした。もともと体が丈夫だったので、低血糖などの症状も出にくかったんだと思います。お腹が空いている状態の方が罪悪感を感じずに済んだので、忙しくて食べる時間がないことが、当時はちょうどよく感じられました。

大学生活で見つけた新しい食べ方

—— 大学に入った後、食事への意識はどう変化しましたか?

環境が変わったこともあり、食事への意識も少しずつ変化していきました。「これなら食べられる」っていう、自分なりの基準を見つけたんです。でも、大学2年から3年にかけて、新たな症状が出てしまって…。母親との関係悪化や恋人との別れを経験する中でストレスが溜まり、チューイング(食べ物を噛んで吐き出す行為)を始めました。

—— その時期はどのような気持ちでしたか?

痩せたいという気持ちよりも、ストレス発散が主な理由でした。母親のことや彼氏のことで悩んでいるときに、食べることまで我慢したくなかったんです。でも、飲み込むのは嫌でした。高校生で食事制限をしていた頃は、体重が減ると「がんばった」と自分を褒めることができました。でも、チューイングは全然違ったんです。やっても何の達成感もないし、むしろ気分が悪くなるだけで、全く思うようにいきませんでした。

「ほどほど」という新しい生き方

—— 現在、食事との関係はいかがですか?

就職活動を終えた今、心にも余裕が生まれています。完全に回復したというわけではないんですが、以前と比べるとだいぶ食べられるようになりました。ただ、コーヒーショップのフラペチーノや菓子パン、ファストフードは、まだ食べるのに抵抗があります。ケーキ屋のケーキは食べられても、スーパーのケーキは食べられないです。こだわりはまだありますが、自分なりに食べられる範囲は広がってきたかなと思います。

—— 最近心がけている考え方や行動などはありますか?

「痩せなければいけない」という切羽詰まった気持ちは、高校生の頃ほど強くありません。これからも、痩せることへの強迫観念に悩まされることはないだろうと思っています。ただ、私は一度決めたことを最後までやり通さないと気が済まない性格で、それは今も変わっていません。だからこそ、「今の自分の考え方は偏っているかな?」と客観的に見る習慣を身につけるようにしています。偏りに気づいたときは、早めに軌道修正できるよう心がけています。

こんな風に自分と向き合えるようになった理由の一つに、友達の存在があります。相談できる友人が周りにいることで、自分の状態を客観的に見られるようになりました。昔は「誰かに話しても意味がない」と思っていたんですが、実際に話してみると気持ちが軽くなることがわかって。支えてくれる人がいるという安心感が、心にも余裕をもたらしてくれているのかなと思います。

—— ご家族との関係はいかがですか?

今も実家で暮らしています。母との関係自体は大きく変わっていませんが、今では私が炭水化物や揚げ物を食べると、母がほっとした表情を見せます。その表情を見ていると、母なりに私のことを心配してくれていたのだと感じます。私が以前のように食べられるようになったことで、母も安心してくれているのがわかります。

同じ痛みを抱える人たちへ

—— 同じような悩みを抱える方に伝えたいことはありますか?

コンプレックスも悩みも、大人になるにつれて寛容になれると思います。私も昔は見た目にすごくこだわっていて、メイクをしないと外出できなかったのに、今は初めて会う人にもすっぴんで会えるようになりました。当時はすごく気にしていたことが、実はそんなに重要なことじゃなかったんだなと今なら思えます。年齢を重ねて色々な経験をする中で物事の見方が変わって、以前ほど思い詰めることがなくなったんです。

—— 最後に、今の気持ちを聞かせてください。

完全な回復を目指すのではなく、その時々の自分に合った付き合い方を見つけていくのがいいのかなと思います。時間の経過とともに、自然と受け入れられるようになることもあります。その時期を待つのも、一つの方法かもしれません。完璧じゃなくても、「ほどほど」でいいんだって思えるようになったことが、今の私にとっては一番大きな変化かもしれませんね。

ももさんとお話してみたい方へ

ももさんは摂食障害ピアサポート Ally Meの登録ピアサポーターとしても活動中です。

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